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のだめカンタービレ二次小説(短編) ブログトップ
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それでも忘れられない [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

俺はあの人を死なせてしまった事を

記憶の奥にしまい込もうとしていた。

そうすることで忘れていた。

でも心のどこかで覚えていたんだろう。

その証拠に飛行機に乗れなかった。

飛行機=あの人の死を思い出させるキーワード。

のだめがそれを解消してくれた。

だから此処(ヨーロッパ)に)来れた。


「どうしたんデスか?哀愁が背中に出てますヨ」

のだめはいつもこんな風だ。

一緒に落ち込むというよりは何か悩んでいても

それがすべてじゃないと言ってくれる。

「・・・・飛行機事故の事をちょっと思い出していた」

少しのだめの表情が曇る。

「しんどいけど覚えていたいんだ、あの人の事。子供の俺でも

あの後、あの奥さんが悲しんだんだろうと想像はついた」

「仕方なかったんデス、前もいいましたケド」

「うん。理解できるし、分かってる。つらい思い出としてでなく

あの人と奥さんが笑い合っていた事を覚えていたいんだ」

「じゃあ、のだめも覚えておきマス」

微笑みながらそう言ってくれるのだめが愛おしい。

俺はこいつのピアノだけに惹かれたわけじゃない。

それが此処に来て気付いたもう一つの事だ。
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誕生日(千秋真一) [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

「ノンちゃん、今からパパお仕事だから」

のだめは中々離れようとしない希を俺からそっと

引き離した。

「あ、ありがとう」

シャツの皺を伸ばす。

日を追うごとになついてくる娘が愛おしい。

優一はおとなしく床に座っている。


「誕生日なのに仕事なんてなんだか可哀想デスね」


「仕方ないさ」


誕生日が特別だった事はもう昔だ。

帰ってこない父の代わりに母がケーキを買って祝ってくれたのは

いつだったかもう思い出せない。


「今日、時間があったらケーキ買っておきマスから」


二人を連れての買い物は大変な事くらい俺は分かっていた。

優一はともかく希はじっとしていたためしがない。


「いいよ。ケーキなんてなくても」

自己中の俺がこんな風に譲歩出来るのも

子供が出来たおかげだ。

のだめが在学してた頃、一人で二人の面倒を何度もみていたから

大変さは分かっている。


「でも・・・」

のだめはもうしわけなさそうな顔で見る。


「俺が帰りに買ってくる」


自分の誕生日のケーキを自分で買うなんて少し変だけど

まあいいだろう。




ルー・マルレの通し練習が終わり、帰ろうとした時

空から白いものが落ちてきた。



「雪か・・・・」

手の中で解けていく雪を見ながら

浮かんだのはのだめと二人の子供たちの顔だった。


「あいつら喜んでるだろうな」

日本よりこっちの方が雪が降る事は珍しい。

後から知った事だが雪に一番喜んだのは

のだめだったらしい。


駐車場の少し手前の一軒のケーキ屋があったのを

思い出して入るとのだめが奇声を上げて喜びそうなものが

沢山あった。


優一と希はまだ食べれないから

俺とのだめの分でいいか。


でもこれを見たら欲しがるだろうな・・・・。





「おかえりなさい」

のだめが二人を抱いて出迎えてくれた。

「?」

ケーキを持っていない俺を不思議そうな顔で見ている。


「忘れたわけじゃない。まだ二人が食べれないから

欲しがると可哀想だから買わなかったんだ」


「そうなんデスか」

しょんぼりした顔ののだめ。


「今度、二人とも外の時にでも食べに行こう」

「本当デスか!?」

ぱっと嬉しそうな顔に変わる。


デートも最近していなかったな、そういえば。








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いつものバレンタインデー [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

「ここ数年前からバレンタインは女性から男性にチョコじゃなくて

男性から女性にをあげるようになったみたいデスよ」


のだめはひまそうにこたつで寝そべりながら言った。

忙しそうにしている俺に気にする様子も無く。

「聞いてマス?」



無視だ無視しよう。

相手にすると余計面倒だ。

俺はもくもくと作業を続けた。


「センパイ、のだめヒマなんですケド」


ああ~、くそっ!

なんで、俺が・・・・。


「真一くん」


「誰のチョコを作ってると思ってるんだ!?」

「のだめは自分で作りたかったのに真一くんが・・・・」

「当たり前だ!チョコに明太子やのりをいれたもんが食えるか!!」

俺は湯煎の作業を中断させて叫んだ。


「のだめは結構いけると思いますケド」

「大体、毎年俺が作ってるじゃねえか」

「だから男性から女性にあげるようになったって

言ったんですヨ」

「勘違いするなよ。俺は俺のを作ってるだけだ」

「ええ~!!ずるいデス」


こうしていつものバレンタインデーは過ぎていく。
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陽だまりの中で [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

けだるいような溶けて行きそうな感覚で

俺は目を開けられずにいた。

同時に開けてしまうと大事なものを失いそうで

怖かった。



どれくらいたっただろう。

誰かが俺の額にはりついた前髪を優しく取り去ってくれている。



これは夢か?

それともあの世か?

そう思ってるといつか聞いた声がした。




「風邪ひきますヨ」


この甘えたような声は・・・・。


この大きくてやわらかい手は・・・・。



「真一くん」


目を開けても大丈夫だろうか?

不安が押し寄せてくる。



「・・・・起きて下サイ」


冷たくて柔らかい感触。



堪えられない気持ちになり思い切って目を開けた。


躊躇なく目に飛び込んでくる光。

「うっ・・・」



「いつの間にか転寝ちゃったんデスね」


少し笑いながら見慣れた顔が見えた。


「のだめ・・・」


安堵感で満たされていくのがわかる。



いつか失うかもしれないかもしれない

言い知れない不安が俺の心のどこかにあったのだろう。




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久しぶりに会いたくて [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

「なんだか久しぶりで緊張してマス」

のだめの足は少し震えてるようだった。

「のだめにしてはめずらしい事言ってるな」

人差し指でちょんと突く。

「ここの管理人がずっと放置状態だったんデスよ。

仕方ないじゃないデスか」

「うん。確かにな。きまぐれだからな」

「どうして呼び出されたんでしょう?」

「さあな」

さすがの千秋もわかりかねているようだ。

(管理人は会いたくなって・・・)


「そんな理由で忙しい俺らを呼び出したのかよ!」

「のだめもピアノの練習を中断して慌てて来たんデスよ」

(すいません)

「ったく、帰るぞ。のだめ」

「ハイ・・・」

「何だよ」

「でも、あの・・」

のだめはおどおどした様子でその場を動こうとしない。

「いくぞ」

半ば強引に手を掴んで行こうとする千秋。

それを振りほどくのだめ。

驚きを隠せない千秋。

「何か、よくわからないんデスけど管理人さん寂しそうで」

「はあ?」

(のだめちゃん、心配かけてごめんなさい。二人になんだか会いたくなったんです)

「そうだったんデスか。大丈夫ですヨ。のだめも真一くんも

いつも見てマスから」

(何だか本当に嬉しくて泣きそう)








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結婚記念日 [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

「おや、チアキめずらしく身だしなみが乱れてるみたいだけど」

着いた瞬間に一番会いたくない奴と出くわしてしまった。


「別に」

俺は何事もなかったように襟元を直す。

「もしかして出る寸前まで奥さんと仲良くしてたとか?」

「・・・・」

この言葉を俺は完全に無視した。

そんなわけありわけないだろう。

心では強く否定したが。



俺がレアなほど身支度も整えず此処(マルレの練習場)に来たのは

ちゃんとした理由がある。



『わかってマスよ。仕事なんだから』

そう言いながらものだめは唇をとがらせ

俺の顔も見なかった。

怒ってる・・・、それは火を見るより明らかだった。

『今日終わってからディナーでも行こう』

なんとか宥めないと。

『別に、良いって言ってるでしょう!』

それと同時に近くにあったハートのクッションが飛んでくる。

こうなると手がつけられない。



俺は必要なものだけ持った。

『とにかく、仕事だから・・・』

そのまま俺は家を後にした。



あいつがあんな風に怒ってる訳はわかってる。

結婚記念日の今日前から一日2人で過ごそうと

約束していたからだ。

でも仕方ないだろう。

急に仕事が入ったんだから。

女はどうして子供みたいな駄々をこねるんだろう。

誰かが言ってなかったか。


男は理想主義で女は現実主義だって。

違うな。

絶対違う。

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駄々っ子 [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

「ったく・・・」

困ったような顔で俺は手で目を押さえた。

「真一くん?」

のだめが心配そうに訊いた。

「大した事じゃない・・・」

「でも・・」

気にする必要ないなんて言えない顔をしてたんだろうな。

「言ったら少しでも楽になりますヨ」

「仕事じゃない。どうしてあいつら(優一と希)は反抗するんだろう?」

最近の二人は何かにつけて逆らう。

ちょっとした事でも否定する。

「なんだ。そんな事なんデスか」

可笑しそうに言うのだめに俺はあからさまにムッとした。

「のだめ!」

「真一くんは反抗期なかったんデスか?っていうか真一くんの場合

今でも反抗してますケド」

「反抗期!?まだ三歳だぞ?」

「ちょうど自我が芽生えるころだって本に書いてましたヨ」

「そんなものなのか?」

俺は二人の嫌々攻撃に少々参っていた。

特に希の暴れ方は凄まじかったから。


子育てって難しい。


考えたら俺は多分子供らしい子供じゃなかった気がする。

認めたくないが、幼い頃だだをこねなかった分

今聞き分けが悪くなってるのかもな。

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ただいま修理中 [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

いつになくのだめの機嫌が悪かった。

「大体ですね、センパイは男のクセに細かすぎるんですヨ!」

唇を尖らせ俺の方を指差しながら言った。

「・・・・・・」

今日は反論すまい。

きっと何を言ってもムダだろうから。

「ちゃんと聞いてマスか?」

・・・にしてもどうして俺が何十年も連れ添った嫁のような愚痴に

じっと我慢しなきゃいけないんだ?

ちょっとムカついてきた・・・。

俺はなるべく聞かないようにくるりと体の方向を変えた。

「どうせ真一くんにはわかんないデス!」

ああ、腹が立ってきた!

「ピアノが壊れたのは俺にせいじゃないだろう?」

「違いマスけど・・・」

「お前がよだれをたらしながら寝たりするからだろう?」

「あ・・・と、えと。そんなに何度もしてませんヨ」

都合が悪くなるとしどろのもどろになり

目線をそらすのはこいつのクセだ。

「とにかくピアノはすぐには直らないんだから俺の部屋ので我慢しろ」

俺は小さなため息をつきながら言った。

「わかってマス。でも・・・、なんか違うんデス」

「おまえにしてはよく三日も辛抱してると思う」

「なんていうか、自分のピアノに悪い気がして・・・」

こいつって変なポリシーがあるっていうか

まあ結局意地っ張りなんだよな。

「でも弾かないと落ちつかない。そうだろう?」

「悔しいケドそうデス」

「店に話じゃあと四日はかかるらしい。ジレンマとの

戦いだな」

「なんか面白がってないデスか?」

「俺だって早くピアノが直ってほしいさ。これ以上

あたられるのはごめんだ」

「別にやつあたりなんかしてませんヨ」

「どうだかな」

「してません!」

結局ピアノが直ってくるまでこれの繰り返しだった。



続きを読む  あとがきのようなものです


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言葉の重み [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

死んでもR☆Sは守るぜとタンカは切ったものの

現実は開店休業状態・・・。

俺は大きな溜息をついた。

ああ、いかん!

俺の取り得は元気だ。

(それ以外にもルックスや他の奴に無い才能もあるけど)

でも一人頑張った所でオケは続けられないしな。

不意に二度目の溜息。




同じ事を繰り返しながら家に着いた。

いけねえこんな顔してたら親父が心配する。



「ただいま!!」

「おう!龍太郎おかえり!!夕飯できてるぞ」

いつものように大きな中華なべを揺らしながら

テンションの高い親父を見ると少し元気が出た。

「サンキュー!!手を洗ってくらあ」


思えばガキの頃から親父が三度三度飯を作ってくれてたな。

お袋は家に居た為しがなかったし。

もし結婚したら俺は裏軒を継いで清良は国内外をお袋のように

飛び回るんだろうな。



自分から背中を押しといて寂しいなんて勝手だよな・・・。

大盛りのチャーハンを口に運びながらそんな事を考えていた。



「龍太郎!」

「ん?」

「さっきから呼んでたんだぞ」

「ああ、悪い、悪い」

「もうすぐおまえの誕生日だ。何かリクエストはないか?」

「誕生日おめでとうって歳かよ!なんもいらねえよ」

「そうか・・・」

肩を落とす親父。

まずかったと思い直す。


「あっと品物はいらねえけどその日はちょっと出掛けていいか?

店手伝えねえけど」

「構わないがそんな事でいいのか?」

不憫そうな目で俺を見る。


「桃大に久しぶりに行ってくる」



卒業して何年もたつのに俺だけが何だか

立ち止まってるみたいで焦ってる。

何もかもが中途半端な気がして。


―七月二十七日  桃山音大―

建物は少し古くなった気がするけど

熱気が伝わってくる。

自分が一番になってやるそんな想いがひしひしと。


ここに居た頃は千秋が居てのだめも何より清良が居た。

なんだろう、このもやもやした気持ちは。



その時、突然携帯電話がメールを通知した。

「?清良だ」

慌てて開くと短い言葉が書かれていた。

そうありきたりな言葉。


『お誕生日おめでとう!』

そして広い余白の後に

『龍太郎、愛してる』



初めてくれた「愛してる」と言う言葉。

たまらなく嬉しくて

人目も憚らず俺は叫んでいた。

「俺も愛してる!!」



ちょっとした事が俺を幸せにしてくれた。

あの清良がこの文字を打つのにどれだけ大変だったか

俺には痛いほど分かってたから。








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彩子の意地 [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

「お茶でもいかが?」

コンセルヴァトワールからの帰り道思わぬ人から

声をかけられた。

のだめは立ち止まったまま何も言えない。

「いやかしら?」

「・・・いえ」

『彩子さんがどうして・・・・?』

少し歩いたカフェで向かい合わせに座る。

「・・・・・・・」

相手の様子を伺うようにのだめは彩子を見ていた。

彩子はコーヒーに一口口を付けると静かにカップを置いた。

近くにいる男性の視線を釘付けにするほどの容貌に

のだめは小さな溜息をついた。

息が詰まるような時間が長い。



「突然ごめんなさいね。父の仕事で私も一緒に来ていたの。

どういうわけかあなたに会いたくて来たの」

『もしかして宣戦布告?』

「大丈夫よ、今更真一を取り返そうとか思ってないから」

意地悪っぽく笑う。

『こういう顔に男の人は弱いんだろうな』

自分との違いを見せ付けられてるようで

のだめの心は少し痛んだ。

「でもちょっと嘘かな?正直まだ引きずってる。

女としての魅力は負けてないと思ってる」

「彩子さん・・・」

「ごめんなさい。あなたを非難しようととかそんなつもりはないの。

ただ自分でもわからないけど真一じゃなくてあなたに会いたかった。

本当にそれだけなの」

寂しそうな笑顔を見せると飲みかけのコーヒーを

置いたまま立ち上がった。

「彩子さん」

『なんていえばいいんだろう?言葉が出てこない』

「お茶付き合ってくれてどうもありがとう」

そういうと静かに立ち上がった。

戸惑いの表情ののだめに

「コンクール頑張ってね」

「ハイ」

そう答えるしかなかった。

自分が現れなかったら真一は彩子と

まだ付き合っていたかもしれない。

人の心はそんなに単純に出来てない。

『真一をお願いね』と言わなかったのは

のだめに対しての思いやりで最後の彩子の意地

だった気がした。






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