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千秋の子育て奮闘記(14)(のだめ) [のだめカンタービレ二次小説]

「いいから行ってきなさいよ」

公演の当日俺が出掛けてからターニャが家を訪れていた。

「別にいいデスよ」

「たまには千秋の公演見に行きなさいよ」

「でも・・・」

「大丈夫。私とヤスでゆうくんとノンちゃん見てるから」

チケットを差し出す。

それでものだめは躊躇していた。

「ママ業も大切だけどチアキの奥さんだって事も

忘れちゃダメよ。浮気でもしたらどうするの?」

「千秋くんがそんな事するわけないよ」

黒木くんが俺の弁護をしてくれてる。

「男なんてわかったもんじゃないわ」

「みんながみんなそんな奴ばかりじゃないよ」

「ヤスは黙ってて!」

ターニャは黒木くんを睨みつけた。

のだめはしばらく迷っていたが決心したらしい。

「ゆうくんとノンちゃんよろしくお願いしマス」

「この前も大丈夫だったから心配しないで」

「うん。二人ともいい子にしてるからゆっくりしておいでよ」

前に俺がぶっ倒れた時も二人が優一と希を預かってくれた。

「ありがとうデス」

「ゆうくん、ノンちゃん、ママにいってらっしゃいは?」

黒木くんとターニャに抱っこされた二人はご機嫌でバイバイする。

「バイバイ」

のだめの姿が見えなくなるとターニャはため息をついた。

「チアキの所に行ってくれればいいんだけど・・・」

「どういう事?」

「チアキマサユキの手術も今日なのよ」

「えっ!?病気で休業という記事は見てたけど

そんなに良くないの?」

「わからないわ。そういう事何も言わないから」

「千秋くん、大丈夫かな?」

「チアキの為にものだめには公演に行ってもらわないと・・・」

「恵ちゃんの性格からするとお父さんの病院に行くだろうね」

「よりにもよってどうして同じ日なんかに」

ターニャは頭が痛そうに押さえた。

ターニャが心配したようにのだめはオヤジの病院に向かっていた。

「ターニャ、ごめんね」

俺の公演よりのだめはオヤジの事が気がかりだった。

二人が来てくれなくても子供を連れて行くつもりだった。

ようやく病室に着くともう一人心配そうに前に立っている人物が居た。

「お母さん・・・」

それは俺の母親だった。

「のだめちゃん」

別れたとはいえ俺には理解できない所で繋がってる事は

なんとなく知っていた。

程なくオヤジがベッドに横たわったまま運ばれていく。

のだめと母も後を追うように歩く。

うっすらと目を開いて二人を見たらしい。

手術室のドアが無情に閉じる。

母は何か声をかけようとしたが

ドアがそれより早く閉じた。

すぐ前の椅子に腰を下ろす。

「きっと大丈夫デスよ」

見るからに落胆した様子の母に声をかけた。

「ええ。ありがとう」

暫くの沈黙の後、思い出したように聞いた。

「今日は真一の公演があったんじゃないの?」

「はい」

「優一くんと希ちゃんは?」

「友達が預かってくれてマス」

「そうなの」

辛そうに顔を下に向けたまま昔話を始めた。

「私達はお互いが自由になりたかったから別れたの。

最初は私が我慢すればいつか帰ってきてくれるって思っていたけど

そうじゃなかったの。雅之さんは本当に不器用な人だった。

誤解されても否定しようとか誤解を解こうとかしないし

子供みたいな所があってひとつの事に夢中になると何も見えなくなって

妻子が居る事すら忘れてしまうくらい。最後には私に嫌われようと

わざと女の人の影をちらつかせたり。本当にバカな人・・・」

「それでもお互いかけがえの無い存在なんデスね」

母は頷いた。

オヤジの病名を知った時は心臓が止まるくらいショックを受けたらしい。

「真一も似たところがあるから・・・」

「大丈夫デス。のだめは真一くんが逃げても追いかけて行きマスから。

浮気なんてさせませんし」

屈託の無い笑みを浮かべる。

「そうね。そうだわね」

母も笑う。緊張が少し解けた。

「のだめちゃん、真一の傍に付いてやってくれないかしら。

口では平気そうな事言ってるけれど多分不安だと思うの」

「でも・・・」

「雅之さんには私が付いているから」

「・・・わかりました。公演が終わったらまた来ます。

何かあったら連絡して下さい」

「ええ。気をつけて」

のだめはオヤジを気遣いながら俺の元へ向かった。









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