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すれ違い(のだめ) [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

俺はけたたましく鳴る電話の音で起こされた。

「たまの休みくらい寝かせてくれ・・」

鳴り止みそうに無い電話の受話器を仕方なく取った。

「一体どういうつもりなの!?」

興奮気味の早口のフランス語。

「何・・?」

俺はすぐには誰か分からず聞き返した。

「私よ、ターニャ!」

「ターニャ・・・?」

俺はまだ事態を把握できてなかった。

「クラシック・ライフの記事見てないの!?」

「それがどうした?」

「ルイのインタビューにどうしてチアキが同席してるの?」

「あ、それはたまたまルイの所で打ち合わせしてる時に

インタビューの記者が来ていて・・・」

「いくらあののだめだって嫌な気持ちになるって思わなかったの?」

「あいつだって仕事でルイの所に行ってるくらいわかってるさ」

まだ俺は二人で写真に写ってるくらいで何をそんなに怒ってるか

わかっていなかった。

「チアキは確かに音楽家としては最高かもしれないけど

恋人としては私ならパスするわ!」

そういうと電話を突然切った。

どうして俺がそこまで言われなきゃならないんだ?

女ってわからない・・・。

もう一度寝る気にもならず仕方なく起きた。

郵便受けには問題のクラシック・ライフが届いていた。

その時ようやくターニャがあれだけ怒っていたのかわかった。

二人で写った写真より記事が問題だった。

まるで二人が恋人関係のように書かれていた。

冗談じゃない!

こんなもの見たらまたのだめの奴・・・。

慌てて携帯にかけるが出ない。

前の事を思い出す。

確かにルイはあいつに似てるけどあいつとは違う。

俺はクラシック・ライフに電話を入れた。

「千秋くん、この前はどうもありがとう。おかげで売れ行きは上々よ」

「どうしてこんな記事書いたんですか?」

「記事・・・?」

「俺とルイがまるで付き合ってるみたいに・・」

「えっ!違うの?」

「私はお似合いの二人だからてっきり恋人同士だと思ってたんだけど」

「書く前にどうして確認してくれなかったんですか?ルイにだって迷惑がかかるし」

「孫ルイからは苦情なんか来てないし彼女には記事を確認してもらったけど

否定もしなかったから」

どうしてルイがそんな事?

「とにかくこれからはプライベートな事を書くのなら俺に一言確認して下さい。

そうでないと今まで色々お世話になったけど今後一切取材を断らせてもらいます」

「そんな・・」

まだ言い足りないと思いながらも電話を切った。

ルイはどうして否定しなかったんだ?

俺と彼女はそんな仲じゃないのに・・。

ルイにも電話を入れた。

「ルイ、お母さんに謝っていてくれないか」

「ママは気にしてないみたいよ」

「そんな訳ないだろう。スキャンダルなんて」

「最近、チアキの見る目変わってきたみたいなの」

嬉しそうに話すルイ。

「どうして否定しなかった?」

「別にたいした事じゃないし」

「だけどこの記事のせいで傷つく人間だっているんだ」

「チアキ、もしかして怒ってるの?」

おろおろしてる様子が伝わってくる。

軽い悪ふざけだったにしろ俺は許せなかった。

「俺はあいつを傷つけたくない!それだけは覚えておいてくれ。じゃあ」

その日の夕方ようやくのだめと連絡が取れた。

「ごめん・・・」

とにかく謝らないと。

「いいんデス、わかってますから」

その声には元気が無い。

「河野さんには誤解を受けるような記事を書いたら二度と取材には

応じないって伝えたし、ルイにものだめを傷つけるような事をしたら

許さないって言ったから。今回だけは許してやってくれ」

「・・・嬉しい・・・デス・・」

泣いてる・・・。

「のだめ・・・」

「真一くんがそこまでしてくれた事が嬉しいデス」

「泣くなよ・・・」

こいつの涙に俺は弱い。

もう泣かせるような事はしないと思った。




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