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彩子の意地 [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

「お茶でもいかが?」

コンセルヴァトワールからの帰り道思わぬ人から

声をかけられた。

のだめは立ち止まったまま何も言えない。

「いやかしら?」

「・・・いえ」

『彩子さんがどうして・・・・?』

少し歩いたカフェで向かい合わせに座る。

「・・・・・・・」

相手の様子を伺うようにのだめは彩子を見ていた。

彩子はコーヒーに一口口を付けると静かにカップを置いた。

近くにいる男性の視線を釘付けにするほどの容貌に

のだめは小さな溜息をついた。

息が詰まるような時間が長い。



「突然ごめんなさいね。父の仕事で私も一緒に来ていたの。

どういうわけかあなたに会いたくて来たの」

『もしかして宣戦布告?』

「大丈夫よ、今更真一を取り返そうとか思ってないから」

意地悪っぽく笑う。

『こういう顔に男の人は弱いんだろうな』

自分との違いを見せ付けられてるようで

のだめの心は少し痛んだ。

「でもちょっと嘘かな?正直まだ引きずってる。

女としての魅力は負けてないと思ってる」

「彩子さん・・・」

「ごめんなさい。あなたを非難しようととかそんなつもりはないの。

ただ自分でもわからないけど真一じゃなくてあなたに会いたかった。

本当にそれだけなの」

寂しそうな笑顔を見せると飲みかけのコーヒーを

置いたまま立ち上がった。

「彩子さん」

『なんていえばいいんだろう?言葉が出てこない』

「お茶付き合ってくれてどうもありがとう」

そういうと静かに立ち上がった。

戸惑いの表情ののだめに

「コンクール頑張ってね」

「ハイ」

そう答えるしかなかった。

自分が現れなかったら真一は彩子と

まだ付き合っていたかもしれない。

人の心はそんなに単純に出来てない。

『真一をお願いね』と言わなかったのは

のだめに対しての思いやりで最後の彩子の意地

だった気がした。






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