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秘密(9) [のだめカンタービレ二次小説]

「・・・・・師匠」

俺はシュトレゼーマンが少しでも勇気が出せるように

祈る思いだった。

今、この扉を開かなければもう二度とこんな機会は

やってこない気がした。


二回ノックをした。

「グーテンターク」

シュトレーゼマンは小さい声が緊張を示していた。

程なくドアが静かに開いた。

「まさか・・・、フランツ」

出てきた高齢の男は大変驚いた様子だった。


しばらく沈黙が続いていたがもう一人その男性の妻と

思われる女性が見えた。


「チアキ」

シュトレゼーマンは手招きして千秋を呼んだ。

どうやら中に入る事を許されたようだった。


家の中は住人と同じように年を重ねて少し古びた感じがしたが

包むような温かさを感じた。

この家は何十年も人々に暮らしを見てきたのだろう。

幸せな時も悲しみに暮れた時も。


「チアキ、私の兄のラードルフだ。そして奥さんのフェビエンヌさん」

「千秋真一です」

千秋は丁寧の頭を下げた。

ラードルフはどことなくシュトレーゼマンに似ていた。

顔とか身体的特徴でなく雰囲気が。


「こちらにどうぞ」

木製の大きなテーブルの椅子に促される。

テーブルは幾つも小さな傷があった。

ドイツ人は物を大切にする。

高価なものを買って何代もそれを使い続ける。


「子供たちもみんな独立して二人では大きすぎるテーブルなのよ」

フェビエンヌは懐かしむように言った。

確かに二人で住むには大きすぎる。

空間は寂しさを生んでしまう時がある。

「何から話していいか・・・」

シュトレーゼマンは俯き加減で言った。

「ああ、ごめんなさい。今、飲み物を・・」


「フランツ、生きて君に会えて本当に嬉しいよ」

ラードルフは涙ぐみながらそう言った。


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