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誕生日(千秋真一) [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

「ノンちゃん、今からパパお仕事だから」

のだめは中々離れようとしない希を俺からそっと

引き離した。

「あ、ありがとう」

シャツの皺を伸ばす。

日を追うごとになついてくる娘が愛おしい。

優一はおとなしく床に座っている。


「誕生日なのに仕事なんてなんだか可哀想デスね」


「仕方ないさ」


誕生日が特別だった事はもう昔だ。

帰ってこない父の代わりに母がケーキを買って祝ってくれたのは

いつだったかもう思い出せない。


「今日、時間があったらケーキ買っておきマスから」


二人を連れての買い物は大変な事くらい俺は分かっていた。

優一はともかく希はじっとしていたためしがない。


「いいよ。ケーキなんてなくても」

自己中の俺がこんな風に譲歩出来るのも

子供が出来たおかげだ。

のだめが在学してた頃、一人で二人の面倒を何度もみていたから

大変さは分かっている。


「でも・・・」

のだめはもうしわけなさそうな顔で見る。


「俺が帰りに買ってくる」


自分の誕生日のケーキを自分で買うなんて少し変だけど

まあいいだろう。




ルー・マルレの通し練習が終わり、帰ろうとした時

空から白いものが落ちてきた。



「雪か・・・・」

手の中で解けていく雪を見ながら

浮かんだのはのだめと二人の子供たちの顔だった。


「あいつら喜んでるだろうな」

日本よりこっちの方が雪が降る事は珍しい。

後から知った事だが雪に一番喜んだのは

のだめだったらしい。


駐車場の少し手前の一軒のケーキ屋があったのを

思い出して入るとのだめが奇声を上げて喜びそうなものが

沢山あった。


優一と希はまだ食べれないから

俺とのだめの分でいいか。


でもこれを見たら欲しがるだろうな・・・・。





「おかえりなさい」

のだめが二人を抱いて出迎えてくれた。

「?」

ケーキを持っていない俺を不思議そうな顔で見ている。


「忘れたわけじゃない。まだ二人が食べれないから

欲しがると可哀想だから買わなかったんだ」


「そうなんデスか」

しょんぼりした顔ののだめ。


「今度、二人とも外の時にでも食べに行こう」

「本当デスか!?」

ぱっと嬉しそうな顔に変わる。


デートも最近していなかったな、そういえば。








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