呪縛4(のだめ) [のだめカンタービレ二次小説]
―千秋の部屋―
思いを巡らせながら
ベッドに寝転んでいるとチャイムが鳴った。
今は誰にも会いたくない・・・・
居留守を決め込もうとしたが
鳴り止まないチャイム。
次第にチャイムだけでなく
ドアをドンドンと叩く音が加わった。
真一はそれでもドアまで行く気力が起きなかった。
ようやく鳴り止んでほっとしたのも束の間。
今度は「開けろ」と叫ぶ声。
ついに真一はドアまで重い身体を引きずり歩いた。
傍まで来て誰の声か気付いた。
今は一番会いたくない相手だった。
「居るんだろう?開けろよ~」
酒の入った松田幸久だった。
近所迷惑になると思い仕方なくドアを開けた。
「やっぱいるじゃねえか」
「何か用ですか?」
無愛想な口調も気にする様子も無い。
「あの変態彼女は居ないのか?」
真一を押しのけ部屋を見渡す。
「居ないのか?それともまたバスタイムか?」
ずかずかと上がり込むと一目散にバスルームに向かう。
居ないのが分かるとつまらなそうにソファに腰を落とした。
「何なんです?」
頭を痛そうに押さえながらもう一度聞いた。
「決まってんだろ!おまえの落ち込んだ顔を拝みにきたんだよ。
俺はてっきりあの彼女に慰めてもらってると高をくくってたんだが」
真一は大きなため息をつくと向かい合わせに座った。
「やっぱりそんな理由で・・・」
一回りも違うはずなのに子供っぽいというか
悪意に満ちてるというか・・・。
「もう気が済んだら帰ってくれますか?」
「彼女を呼び出して慰めてもらえよ」
「あいつはあいつで自分の事で精一杯なんです」
「随分冷たい彼女だね~」
茶化すように言う松田の態度にも
言い返す気も起こらない。
「ああ、つまんねえ。もう俺帰るわ」
立ち上がってドアのノブに手をかけながら
振り返った。
「せいぜい悩むんだな。大失敗期待してっから」
悪魔のような微笑を浮かべながら帰った。
真一はもう一度ベッドに倒れこんだ。
おもしろがってる・・・。
いや、あれは松田さんなりの励ましなんだと思った。
思ったことと反対の事を言うのがあの人のクセなんだ。
傍にある携帯電話を手にしながら
のだめを思い浮かべた。
「あいつどうしてるんだろう・・・」
真一はいつの間にか深い眠りに落ちていった。
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