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求めるもの(12) [のだめカンタービレ二次小説]

モーツァルトが床に伏せた。

顔の色が・・・ない。

もう最期の時が近い。


「まだ僕は・・・完成・・させてない・・」

うわ言のように繰り返す。


こんな状態の彼を放って奥方は出掛けている。


心配じゃないんだろうか?

「・・・コンスタンツェ・・・はいないんだ・・・」


「子供を連れて出掛けたようだけど」

俺は小さな嘘をついた。


彼女はきっと子供二人を置いて遊び歩いてる。


「カールは大きい・・・けどフランツはまだ・・

生まれたばかり・・・」


貴方が心配してるフランツは「モーツァルト二世」として

音楽家になる。


「書きかけの曲を写して・・・くれないか?」

「もう少し体調が落ち着いてからの方が・・・」

モーツァルトは小さく首を振った。


わかってる。この人は自分の死がすぐそこまで

迫ってる事に気づいている。



俺は指先を震わせながら彼の言うように楽譜に

記入していった。



震えた理由は感動もあるだろうが彼と別れなければならない

確かな予感がそうさせていた気がする。



彼の頭にはオーケストラが正確にインプットされ

かってサリエリが思ったように音符ひとつでも

違っていたら曲の出来は大幅に変わっていただろう。



今、サリエリが感じた羨望や嫉妬がよくわかる。

本来ならこの曲を書き写すのは彼だった。



俺は大きく歴史を変えてしまった。


いやもしかしたら

俺が今居るこの世界は本当の世界でないのかもしれない。



長い夢を見ているのかもしれない。



もうすぐ目を覚ますとあいつ(のだめ)が

可笑しそうに横で座っているかも・・・・。







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