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結婚記念日 [のだめカンタービレ二次小説(短編)]

「おや、チアキめずらしく身だしなみが乱れてるみたいだけど」

着いた瞬間に一番会いたくない奴と出くわしてしまった。


「別に」

俺は何事もなかったように襟元を直す。

「もしかして出る寸前まで奥さんと仲良くしてたとか?」

「・・・・」

この言葉を俺は完全に無視した。

そんなわけありわけないだろう。

心では強く否定したが。



俺がレアなほど身支度も整えず此処(マルレの練習場)に来たのは

ちゃんとした理由がある。



『わかってマスよ。仕事なんだから』

そう言いながらものだめは唇をとがらせ

俺の顔も見なかった。

怒ってる・・・、それは火を見るより明らかだった。

『今日終わってからディナーでも行こう』

なんとか宥めないと。

『別に、良いって言ってるでしょう!』

それと同時に近くにあったハートのクッションが飛んでくる。

こうなると手がつけられない。



俺は必要なものだけ持った。

『とにかく、仕事だから・・・』

そのまま俺は家を後にした。



あいつがあんな風に怒ってる訳はわかってる。

結婚記念日の今日前から一日2人で過ごそうと

約束していたからだ。

でも仕方ないだろう。

急に仕事が入ったんだから。

女はどうして子供みたいな駄々をこねるんだろう。

誰かが言ってなかったか。


男は理想主義で女は現実主義だって。

違うな。

絶対違う。

公演が終わったら外はすっかり夜になっていた。


あいつの機嫌は良くなっただろうか?

あまり後のないのだめだからもう大丈夫だろう。


俺はそう思うことにした。

とりあえずあいつの好きそうなデザートでも買って帰ろう。




その楽観はあっさり崩れた。


家は俺が出かけた時のまま。

のだめは暗い顔をでソファに座ってる。


かなりヤバイ!



「・・・・・のだめ。おまえの好きなケーキを買ってきたぞ」

「要らないデス・・・」


相当重症だ。

のだめがケーキを拒否するなんて。


「せっかく買ってきたのに」


「食べたくないんデス」

「?」


なんか変だ。

もしかして拗ねてるんじゃなくて

本当に具合が悪いのか?


「のだめ・・・?」

俺はのだめの額に手をやる。

「熱なんかないですヨ!」

荒っぽくそれを払いのける。



俺はそれが少し腹が立って黙り込んだ。




「気分が悪い・・・んです。なんか吐き気がして」

その言葉で俺は再び駆け寄る。


「おい、大丈夫か?」

「ダメです・・・」

口元を押さえながらのだめはトイレに駆けていった。


「のだめ!」





その時のだめのイラつきの原因が分かった瞬間だった。

何度目かの結婚記念日で一番嬉しい出来事だった。



そう俺たちの子供ができた事が最高の贈り物になった。
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